宮本 崇雄 takao miyamoto/代表・一級建築士
茨城県笠間市出身。大学で機械工学を学び、卒業後は冷凍設備を扱う会社で配管工に。現場で見かけた建築士の姿に憧れ、独学で二級建築士資格を取得。転職先の設計事務所で働きながら一級建築士資格を取得後、2018年に独立してsamurai-architectを設立。プライベートでは高校時代から続ける趣味のバイクカスタムを楽しむ。1児の父親。
建築事務所だけど、建てることだけに縛られなくったっていい。なんでそんなふうに考えるようになったか?
それは事務所がどうはじまったか、から話したほうがいいのかなぁと思います。じつは私、最初から建築士になりたかったわけではないんです。
学生時代の専攻は、なんとなく興味のあった機械工学科。でも、やりたいことはなくて、卒業後は学校の先生に勧められるがままに冷凍設備の会社に入り、配管工の仕事をしていたんです。そんなとき出会ったのが、搬入先の現場でスマートに指示を出す建築士の姿でした。
技術と感性を活かして、「個人」として働く姿がかっこよくて、これだ!と思いました。それからは建築士になることだけを考えて猛勉強。お金はかけられなかったから独学で資格を取り、転職先の設計事務所で経験を積ませていただきながら一級建築士に。その後、独立して立ち上げたのがsamurai-architectです。
つまりこの事務所は、誰かに与えられたことをやるのではない、自分が本心でやりたいと思ったことをやる、そのための場所なんです。「サムライ」とつけたのも、信じるもののために命をかけて戦うサムライの生きかたに憧れたから。今思えば、自由を守って戦うための建築という武器がほしかったのかもしれない。samurai-architectは誕生した瞬間から、建築事務所としては本流ではない、異端の存在だったのかなと思います。
いまsamurai-architectが、設計だけでなく、建物状況調査で多くのお客さまから頼っていただいていること。これもひとつにこだわらないことで、成長につながった事業の例です。きっかけはコロナの感染拡大でした。建築プロジェクトが次々とストップするなかで、既存の建物の調査ニーズは変わらずにあったんです。
とくに印象に残っているのが、福島のある施設。現場に入って驚きました。防水塗膜に穴があったり、養生材が残ったままだったり。そこにあったのは、これまでの形骸化した建物状況調査の実態そのもの。建築に憧れて飛び込んだ身からすると、かなりショックな出来事でした。
大切な建物のことを、きちんと知っておいてもらいたい。私はそんな想いで、お客さまにできる限り調査に立ち合っていただきながら、劣化箇所や今後考えられるリスクについても細かくご説明しました。最後にお礼を言われたとき、改めて思ったんです。いまある建物を正しく守ることも、建築士だからできる仕事なんだ、と。
設計に専念したい、調査をあまりやりたがらない建築士の方もいるけど、私は機械工学科出身の機械好きだから、構造を見ることにもワクワクするタイプ。いわゆる「建築士らしく」はないかもしれない。でも必要としてくれる人がいるなら、何でも力になりたいんです。
組織の状況
行動と目標
第一期2001〜2018年
サラリーマン〜独立期
独学で建築を学び、
設計事務所に就職後、独立。
第二期2018年〜
組織化期
設計・建物状況調査を中心に
仲間を
集めて、組織の枠組み
をつくる
第三期
組織拡張期
第二期でできた枠組みを強固にして、
サービスと技術の向上をはかる
第四期
自分たちで事業を起こす期
これまで培った建築技術をつかって、自分達で事業を企画して設計して運営する。
そこで得た実体験を仕事に反映しながら、
一段階上のサービスを提供する。
第五期
日本統一期
日本各地に事業所を設置
各地で大名(所長)が活躍
samurai-architect 将来こうなるイメージ
つくば市内某所の物件をリノベする想定。ポイント1/事務所に、近隣の人達が楽しめるスペースやお店の機能を持たせて、少しでも街に貢献できるようにしたい。ポイント2/一般に開放した所員と共用の建築書籍を読むことができるスペースをつくって、建築を楽しめたり、交流がうまれるきっかけとしたい。
「何でもいい」は、事務所のこれからを考えるときもいちばん大切にしている言葉。というのも、samurai-architectは建築事務所ですが、いつかその枠にとらわれないビジネスを展開したいと考えています。具体的にはバイク屋、古着店、グリーンショップ、不動産など、それこそ何だっていい!
なぜなら私自身が、本心に従って生きたいとスタートした事務所。何か本気でワクワクできることを形にしたいんです。実際、ただの妄想ではないと思っています。だって真ん中に「建築」があるから。想いと確かなプランがあれば、どんな場でもつくれる、なんでもできるのが建築のすごいところだからです。そのためにいま必要なのは、既存の建物状況調査や設計事業の基盤を固めること。それを担う人の力を集めることだと思っています。
目指すは、私の大好きなマンガ『アパッチ野球軍』みたいな組織(ちょっと古い?)。経験のあるなしに関係なく、やる気のある人が集まりそれぞれの得意を生かせるチームです。私自身、もともと建築畑ではない、脇道を走ってきた人間なので、想いがあれば全員にチャンスがある場所をつくりたい。働く場所だってこだわらなくていいと思っているから、いつか日本全国にメンバーが「大名」みたいに拠点を構えて、samuraiネットワークができたら面白いですよね!
そう、「何でもいい」って、投げやりに聞こえるかもしれないけど、じつは最強の言葉なんです。どんなことにも縛られない、どこまでも自由でいられるってことだから。いまの私の仕事は、この想いを実現するためのしくみをつくること。その先でsamurai-architectを何でもアリな、みんなにとって最高の場所にしていくことだと思っています。